萩尾望都先生の作品のイグアナの娘。
人間に恋をしてしまったイグアナ姫に
魔法使いが言いました。
「人間の女の子にしてあげよう・・・ただし・・・」
自分の産んだ娘がイグアナにしか見えず
どう愛すればいいのかわからず冷たく当たってしまう母親と
同じく自分がイグアナに見えて
愛されない心に寂しさを募らせていく娘。
それでも強く生きていこうとする娘・リカは
愛する人との間に子供を授かります。
自分にはまったく似ていない人間の子を――・・・。
過去には映像化もされた表題作を含む少し不思議な短編集。
ネタバレもありますので先に無料で試し読みをしたい方はこちら。
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イグアナの娘のあらすじは?
「元気な女の赤ちゃんですよ」
そう看護師さんに呼びかけられたった今
出産を終えたばかりの母親は充実感に満ちた
笑みを浮かべながら我が子の方を見やりました。
途端に見開かれた目。
母親の口から出たのは悲鳴――
恐怖と混乱から震えるように絞り出された悲鳴。
それもそのはず看護師さんに抱かれた我が子は
イグアナそのものだったのです。
目を細める顔もばたつかせる手足も
おまけに人間にはありえないしっぽまで。
母親以外には娘のリカは人間の赤ちゃんに見えているようで
お姫様のように可愛がる夫の姿に苛立ちすら感じます。
こんなイグアナの娘ではなく
普通の赤ちゃんを授けてほしい・・・。
イグアナの娘
そして2人目の子どもであるマミが生まれます。
この子はどこからどうみても普通の人間の女の子で
母親はようやく子どもをかわいいと思えるのでした。
ところがかわいいマミの存在が
リカへの不快感をますます募らせていくことに。
どうしても愛することができず
無邪気なリカの言動にいちいち難癖をつけたり
マミと比べてけなしたりしてしまいます。
不思議なことに写真で見るリカは
ちゃんと人間の女の子に見え
それがさらに母親を混乱させて
娘を愛せない自分を苦しめるのでした。
相変わらずイグアナにしか見えない
リカも成長をしある日、母親が恐れていた言葉が
彼女の口をついて出てきます。
「あたしがイグアナだから、ママはあたしがキライなんだ」
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イグアナの娘のネタバレとその後の展開は?
母親はリカがイグアナに見えるのは
自分だけだと思っていたのですが
ところがリカ本人にも鏡に映る自分の姿が
イグアナに見えていたのです。
思わず声を荒げる母親。
だれかほかの人からもリカがイグアナだと指摘されたら・・・
とずっと恐れていました。
娘を愛せず苦しむ母親と同じようにリカも容姿のせいで
母親から愛してもらえないことに苦しんでいました。
どうしてイグアナに生まれてしまったんだろう。
神様が魂と体を入れ間違えてしまったのだと
そう考える彼女は大きくなったらガラパゴス諸島に行って
本当の両親を探そうと思うのです。
そんな風に育ってきたリカですが見た目にも美人で
勉強もよくできたので周囲からは
羨望の眼差しを浴びることもしばしば。
彼女としては自分がイグアナだと思い込んでいたので
意にも介していませんでしたが
妹のマミの反応はだんだんと変わっていきます。
これまで母親に溺愛されて姉よりもかわいく
優れていると信じていたマミも
ようやくリカの本質に気付いたのです。
イグアナの娘
大学生になったリカは恋をします。
けれどイグアナの自分が恋人を食い尽くしてしまう
そんな夢を見てその想いを諦めるのです。
そんなときに出会ったのが牛山一彦で
その名前のように大きな体をした牛のような男。
再び夢を見たリカは牛山に噛みつこうとするものの
まったく歯が立たず逆に自分を軽々と持ち上げる姿に
彼なら大丈夫だと安心して付き合うことに。
そのまま2人は卒業と同時に結婚。
母親から離れた地で夫と2人きりで
それはリカにとってこの上ない幸せな時間でした。
ところが子どもを授かったことで
その幸福は翳りを見せ始めるのです。
生まれてきた子はリカの予想に反して
ごく普通の人間の子どもでした。
イグアナか夫に似た牛のような
子どもが生まれると思っていたのに・・・。
どことなく母親に面差しが似ている我が子に
ゾッとしてしまうリカ。
子どもをかわいいと思えず葛藤する彼女のもとに
妹のマミから電話が掛かってきます。
それはリカの運命を大きく変える電話でした――・・・。
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イグアナの娘の感想は?
母と娘のねじれてしまった関係を描いたイグアナの娘ですが
最後には心に溜まった澱が少しだけ取り払われたようで
ある意味ではハッピーエンドとなっています。
もう20年以上前に見たドラマの原作だということもあって
懐かしくなって初めて読んでみたんですが
ドラマとは違う結末なんですね。
原作のリカは最後までイグアナの魔法は解けません。
イグアナの姿は母による暗示なのか
本当に魔法にかけられているのか――。
それも謎のままなのですがリカとその子どもの関係はきっと
リカと母親との関係とは違うものになるでしょう。
イグアナの娘
イグアナの娘は表題作のほかに5作を収録した短編集です。
どれもちょっと不思議でファンタジーで
胸に切ない余韻を残していくお話ばかり。
特に帰ってくる子という作品は
親としては共感するところが多く
子を失った母親の気持ちや残った子の葛藤など
最後には涙してしまいました。
萩尾先生らしい繊細なストーリーばかりで
短編とはいえとても読み応えがあります。
みなさんも萩尾ワールドに浸ってみてくださいね。
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