伊藤実先生の作品の『アイシテル~絆~』。
11歳の少年が7歳の男の子を殺してしまうというショッキングな事件を題材にした
前作『アイシテル~海容~』の続編である作品。
本作では加害者の弟である裕二の目から見たあの事件以後の世界が描かれています。
大好きだった兄の思わぬ過去を知ってしまった弟の心は?
容赦ない世間の偏見に翻弄される加害者家族の運命とは?
逃れられない連鎖の中で兄弟が再び邂逅したとき・・・
その先にはなにが見えたのでしょうか。
伊藤実先生のアイシテル~絆~を読んで
終わりなき世界の結末を見届けましょう。
ネタバレもありますので先に無料で試し読みをしたい方はこちら。
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アイシテル~絆~のあらすじは?
主人公である野口裕二は18歳年の離れた兄・裕一が大好きでした。
兄は裕二が赤ちゃんのころからかいがいしく世話を焼いてくれ
夜泣きがひどい時期には母に代わって裕二をおんぶして夜中の街を散歩してくれたほど。
高い高いをするのもおむつを替えるのも食事も遊ぶ相手もすべて兄。
常に一緒にいたせいか裕二の最初の言葉は「にいた」でした。
親子4人での幸せな生活でしたがある日父が倒れてしまいます。
裕二は自分が「お兄ちゃんが一番好き」と思っていたから
父は神様に連れていかれてしまうのではないかと考え泣きます。
病室で息を引き取る間際「ゆう・・・いち・・・おれだけ・・・すまない」と
父が謝るのを彼は不思議に思います。
また兄も「父さん、ごめん」と何度も謝るのでした。
裕二は自分の家の秘密を知る由もなかったのです。
アイシテル ~絆~
父が亡くなってからしばらくして裕二は
一緒に寝ているはずの兄の姿がないことに気付きます。
家中探し回ってもどこにもいないので外に出ると兄は外階段に座り込んでいて
ほっとして声を掛けようとしたとき裕二はいつもと違う兄の様子に足を止めます。
兄は祈るように両手を組み震えながらなにかを呟いているようでした。
その苦しそうな横顔に話しかけることができず裕二は静かに部屋に戻ったのでした。
翌朝はいつも通り優しい笑顔の兄で
裕二は夕べのことは見間違いだったのだと思うことに。
ところが小学校に上がると裕二の周りでは不穏な空気が流れ始めました。
保護者が声を潜めてなにかを話していたりクラスメイトが
裕二の机に「ヒトゴロシ」と落書きをしたり・・・。
理由が分からないイジメに戸惑いながら家族には知られまいと振る舞う裕二。
いじめっ子たちにも負けずと戦おうとするのでしたが――・・・。
ある日、兄が黙って家を出て行ってしまうのです。
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アイシテル~絆~のネタバレとその後の展開は?
裕二のランドセルに書かれた「ヒトゴロシ」の文字にショックを受け
兄は弟のためを思って何も言わずに裕二のそばを離れたのでした。
ところがなにも知らない裕二は「ずっと一緒にいる」と言ってくれた兄が
自分を置いていったことが許せませんでした。
捨てられたような気がしたのです。
そして新天地にて母と2人の生活を送りはじめて数年
中学3年生になった裕二は兄が過去に起こした事件について知ってしまいます。
優しくて大好きだった兄は殺人者だったのだ――と。
兄を失った淋しさはすぐに兄への憎悪へと変わっていきました。
同時に事件後に自分を産んだ母のことも受け入れられなくなってしまいます。
「なぜおれを産んだ」
高校生になった彼は激しい言葉で母を責め立てます。
家族の中で自分だけがなにも知らなかった知らないまま世間からは
犯罪者の弟として見られていたのだという苛立ちや絶望は抑えきれないものでした。
そして他人と距離を置き誰にも心を許さないまま裕二は成長していきます。
アイシテル ~絆~
大学時代に唯一の理解者である友人ができたと思ったのも束の間
あることがきっかけで彼の本心を知ってしまい
どうやっても自分に課せられた重りはなくならないのだと実感することに。
1人暮らしを始めて慎ましく穏やかな日々を送っていた裕二。
そんな彼にある出会いが訪れます。
それはある小さな個展に飾られた1枚の絵がきっかけでした。
革のキャンバスに描かれた抱き合う母と子の作品。
子を慈しむ母の愛に満ちたようなその絵が
裕二にはなんともいえず悲しい絵に見えたのです。
彼は自分でも気づかないうちに涙を流していました。
その絵を制作したのは綿アメのようなくせ毛の加奈という少女でした。
彼女の祖父に誘われるまま彼らの工房に勤め始めた裕二は
次第にゆったりとした日常に心地よさを抱いていきます。
そんな中、加奈の手首にためらい傷があることに気付いたことで
彼女の生い立ちについて知ることになります。
それはあの絵に隠された加奈の哀しみの原因となったことでした。
やがて工房で開かれる教室でも裕二の噂が広まることに。
加奈たちに迷惑を掛けまいと出ていこうとする裕二でしたが
加奈はすべてを知った上で彼を受け入れようとしてくれました。
こうして2人は結婚することに・・・。
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アイシテル~絆~の結末は?
兄の過去を知ってから冷たく凍えた心が
加奈を愛することで少しずつ溶け始めた矢先――
彼女のお腹に新しい命が宿ったことを知らされます。
自分のように“犯罪者の家族”というレッテルを貼らないためにも
子どもは望まない裕二でしたが加奈は頑として産むと言って聞かないのでした。
「裕二はいまも不幸せ?
いまも生まれてこなければよかったって思ってる?」
加奈の言葉に自分のこれまでを振り返った裕二。
彼は加奈と一緒に子どもを育てていくことを決意し
たくさんこの子に愛情を注ごう・・・と。
こうして生まれた我が子はとてもかわいく
何にも代えがたいほど愛しい存在でした。
アイシテル ~絆~
大切な家族を守っていかなくてはと思う心に比例するように
幼い我が子を抱きしめるたびに兄のことが思い起こされて堪らない気持ちになる裕二。
兄はもういなかったものと忘れようとするのですが・・・。
ところが思ってもみない形でふたりは再会することになるのです。
恨み続けてきた兄を目の前にして激しい感情に揺さぶられる裕二。
しかしそのただ中にふと甦る兄に背負われた赤ん坊の記憶が
裕二に大切なことを思い出させてくれます。
キヨタンを殺した罪の意識で眠れないほどの苦しみを
ただ受け止めて生きる兄と大好きな兄が殺人者だと知って恨む弟。
どうやっても逃れられない贖罪の日々に差した一筋の光とは――・・・?
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アイシテル~絆~の感想は?
前作であるアイシテル~海容~の続編は
加害者の弟という珍しい視点から描かれた物語でした。
自らにはなんの非はなくとも兄の罪を背負うことになってしまう弟。
理不尽な状況に憤怒を募らせながらも兄へのどうしようもない恋慕が
捨てきれずに苦悩する様がすごく切なかったです。
裕二の立場だったら「どうして自分は生まれたのか」と
苦しむのは自然なことですよね。
前作では裕二が生まれたことによってキヨタンにしてしまった罪の重さを
本当の意味で理解することになった裕一。
アイシテル ~絆~
時が経つにつれその重みは増していき耐えきれないようで
ただ祈りを捧げたり悪夢にうなされていました。
贖罪とはどうあるべきなのかということを考えさせられますね。
幼さゆえに起こってしまった事件の結末がこの物語で見届けることができます。
ハッピーエンドではありませんがかすかな光が見えたような気がするのです。
みなさんもアイシテル~絆~を読んでみてくださいね。
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