押見修造先生の作品の血の轍。
中学生の長部静一の毎日はごくごく平凡でした。
お調子者の友人たちに密かに想いを寄せているクラスメイト
穏やかな両親にたびたび遊びにくる伯母といとこ。
どこにでもありふれた普通の生活だったはず――
あの夏の日までは・・・。
いつも優しげな笑顔を浮かべる母の違和感があらわになるとき
静一は愛情という名の果てなき奈落を知るのです。
“毒親”をテーマにした衝撃の話題作!!
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血の轍のあらすじは?
窓の外からはセミの鳴き声。
長部静一は眠りから覚めて
ボーっとしたのち枕に顔をうずめます。
さきほどまで彼は夢を見ていました。
幼い静一にとって視界の大半を占めるのは
自分の手をしっかりと繋いでくれる母の姿。
その母の指さす方を見ると
日陰の中に白い猫が横たわっていました。
駆け寄って猫を触った静一は
いつもと違う感触に不思議そうに言います。
「まま、このこ、つめたいよ?」
少し驚いたように見開かれる母の目。
彼女も猫の冷たさを確かめると死んじゃってると呟きます。
どうして猫が死んでいるのか静一が何度も尋ねると
母は幼い我が子を振り返って――
愛おしそうに瞳を細めて微笑んだのです。
夢はそこで途切れて母の言葉はありませんでした。
血の轍
なおも枕にうずもれる静一の耳に自分の名を呼びながら
階段を上がってくる足音が聞こえます。
「静ちゃん!」
起きるように促す声に静一が空返事をすると
母はベッドサイドに腰かけて
静一の首筋をこちょこちょとくすぐります。
その手を振り払うように勢いよく起きた静一を
母は微笑んで見つめていました。
友達とふざけ合いながら登校し
想いを寄せるクラスメイトの吹石をチラ見して胸を高鳴らせ
休日に遊ぶ約束を友達として帰宅する――
そんな平凡な日々。
たとえいとこから“過保護”だとからかわれても
ずっと続くと思ってきた日常。
あの夏の日に背筋が凍るような
母の微笑みを見てしまうまでは・・・。
惜しみなく注がれる母の愛情が真綿で首を締めるように
ゆっくりと自分を奈落の底へ導いていくのだと気付くまでは――・・・。
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血の轍のネタバレとその後の展開は?
いとこのしげちゃんが言うように
静一の母は少し過保護な面がありました。
幼稚園のときは登園を嫌がる静一に付き添って
毎日教室の後ろで見守ったり
中学2年生になった息子を今でも幼子のように扱おうとしたり。
ぎゅっと抱きしめようとしたり顔を包み込むようになでる
ほっぺにチュウをする・・・。
どれも思春期の男の子にするには不釣り合いなスキンシップ。
その過剰さに戸惑って反発することはあっても
悪気のない笑顔を向けられると強くは言えない静一なのでした。
その夏は週末ごとに伯母としげちゃんが遊びにくるので
静一は友達や片想いをしている吹石と遊ぶ約束ができずにいました。
もちろんしげちゃんと遊ぶのは楽しかったのですが
気になるのは母の様子。
伯母と他愛のないおしゃべりをして過ごす母は
いつも楽しそうに笑っていて――
でも静一にはどことなく違和感を覚えずにいられないのです。
そして夏休みのある日。
静一たちは父方の祖父母としげちゃん一家と
山登りにやってきていました。
和やかな雰囲気で山頂を目指しながらも
時折くもりを見せる母の表情。
だれも気付かない母の密やかな気配に
静一だけは察してさりげなく目をくばります。
そんな母の表情が明らかに変わったのは
見晴らしのいい崖で休憩をしているときでした。
崖からの景色を眺めるようにしげちゃんに誘われた静一。
端までそろそろと進む静一に
母が心配して袖を引きながら声をかけます。
そんな様子をからかうように
わっ!という声とともに静一を押すしげちゃん。
反射的に静一に抱きついて引き寄せた母は
これまでにないほど狼狽して大きく目を見開いていました。
血の轍
途端に大きな声で笑いだす伯母。
「何してるん、清子さん!?本当過保護ねぇ!!」
つられたようにみんなが笑いだします。
母はなにかをごまかすようにすみません・・・
と笑っていましたが視線はどこかに逸らしたまま。
そしてなにごともなかったように再開される山登りは
昼休憩を迎えてまた団らんの笑い声が辺りに響きます。
車座になってご飯を食べる祖父母と伯母たちそして父。
その輪から少し下がったところに母と静一は座っていました。
大口を開けて笑う伯母を見ながら
静一はさっき言われた言葉を思い起こします。
「本当、過保護ねえ!!」
なにかを考えるように口数の少ない静一に
ションベンに行こうと声を掛けてくるしげちゃん。
押し切られるような形で付き添う静一はやはり言葉少なく
探検に誘われてもあまり乗り気になれないのでした。
それでも仕方なく付き合うと
また崖を見つけたしげちゃんに静一は呼ばれます。
さきほどのこともあって隣に並びたがらない静一に
しげちゃんは謝りながらも
ハッキリと意見を言わない静一に苛立ちをぶつけます。
押し黙る静一が気配を感じて振り返ると
すぐそばに母が立っていました。
なかなか戻ってこないから心配したという母は
崖の先に立つしげちゃんに危ないから戻るように促します。
ところがしげちゃんは
わざと片足立ちになってふざけてみせるのです。
「ばっかじゃねぇん!?ほんと過保護だいねぇ!」
伯母と同じ言葉を口にした瞬間
バランスを崩してよろめくしげちゃん。
母が駆け寄りその体を抱き寄せて事なきを得ても
しげちゃんは悪態をつくのを止めないのでした。
静一からは窺えない母の表情。
静かな時間が流れる中でしげちゃんは違和感を覚え
母に呼びかけます。
次の瞬間、母は思い切りしげちゃんの体を突き飛ばしたのです。
信じられない表情で宙に放り出されたしげちゃんが
すぐに視界から消えてしまいます。
鈍い音とともに小さな悲鳴が崖下で聞こえたきり
辺りはまた静かに――。
母がゆっくりと振り返ります。
その顔はあの幼い日のように優しく
愛情に満ちた微笑みをたたえているのでした。
思わず目を逸らした静一は自分の手が震えているのを見ます。
「きゃああああ~っ!」
悲鳴に驚いて顔を上げると崖の先でへたり込むように座った母が
静一にみんなを呼んでくるように繰り返していました。
動転している様子の母はしげちゃんを突き落とした
その人とは思えないほどで・・・。
静一はみんなの元に駆け出しながら
微笑む母の目を口元を思い返していました。
その後、悲鳴で駆け付けたみんなに“しげちゃんがふざけていて
崖から落ちてしまった”と説明した母。
慌ただしく捜索に向かう祖父母や叔母
救助を求めてふもとに戻る父が去り
崖の上にはまた母と静一の2人きりになります。
ボーっと虚ろな表情でなにかをボソボソとしゃべり続ける母。
静一が呼ぶ声に我に返るとぎゅってして・・・
そう言いながら静一にしがみつきます。
母の背中を抱きしめながら呆然とする静一。
生まれて初めて目にする母の姿を
彼はどう受け止めたのでしょうか――・・・?
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血の轍の感想は?
一言でまとめてしまえば気味が悪い作品です。
はじまりからずっとごく平凡な日常が展開しているにも関わらず
どこかがおかしいなんともいえない違和感が続きます。
静かに――でも、明らかになにかが起こる気配。
スローテンポな展開で劇的に物語が動き出すのは
1巻終盤になってからなのですが
微かな気持ち悪さに引きずられるように
夢中で読み進めてしまいました。
血の轍ははじまったばかりの作品なので
静一の母の穏やかな笑顔が
なにを意味しているのかはまだわかりません。
血の轍
いとこのしげるを崖から突き落としたときも
幼い日に猫の亡き骸をなでながら静一を振り返ったときも
彼女は同じ笑みを浮かべていました。
私がこの母について底が知れないと思ったのは
しげるを突き落としたことについて
静一に口止めをしなかったことです。
息子が目の前で一部始終を見ていたにも関わらずなにも言わず
みんなの前であたかも事故であったかのように説明したということ。
そして彼女はおそらく静一が自分の犯した罪を
告白することはないだろうと悟っていただろうこと。
“毒親”がテーマになっているという今作の血の轍。
この先、母のいびつな愛情を知った静一は
どんな行動を取っていくのか続きがすごく気になります。
みなさんも、血の轍をお楽しみくださいね。
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